■ ラボ・ミーティングはハードルが高い?
ラボでの主な活動は基本的に月1回のミーティング。ラボ・ミーティングでは、作品の進捗について発表(任意)、太田さんやラボのメンバーから意見を聞き、それを参考に各々のペースで作品づくりを進めている。
た: ラボ・ミーティングのよさは、みんなの意見をいっぱい聞けるということですよね。多方面から意見が出てくるのでとても参考になります。
か: 得意分野を持っているメンバーが多いので、最初はレベルが高いと感じて、自分自身の制作のハードルを上げてしまっていました。でも、ミーティングを繰り返す中で、それぞれの強みを活かしたらいいんだと感じるようになりました。
ま: 制作のハードルという点ではコストの問題も。
し:思うようなものをつくりたいとなると、どうしてもコストの問題が出てきますね。わたしはまだそんなにかけてないけど、これからまだかかる。お金がネックになる部分はあるかも。そうじゃないやり方をやってもいいと思うけど、周りがこだわっているから周りのクオリティーに合わせようとしてハードルが上がってしまうのかな。
か:印刷に出すという話を聞くと、印刷会社に出したほうがいいのかな、と思ってハードルが上がっちゃう。
さ:0期のときは、印刷に出すというのがわたしの中ではハードルが高かったから、迷った結果シルクスクリーンにしました。
し: ほんとはもっと自由でいいのかもしれない。
か: 今日の造本研究[*10 ] でいろいろな本のカタチがあることを知って、本とはこうあるべきという形にとらわれていたのかな、と。いろいろ見てみることの必要性を感じました。
[*10 ]さまざまな造本についての知識を深めるワークショップ。講師は佐藤さん。参加は任意
し:そうそう、工夫次第。 そういえばラボに入る前に、「1年かけて1冊もつくれないんですか?」なんて、普段自分が適当につくっている作品の感覚で聞いちゃったけど、実際入ってみると、まあ、つくれないな、というのが実感。こんなにいろいろ試作して……。
さ : 太田さんの求める感覚が高いんだと思います。ミーティングに出ると、もっと深く考えなきゃいけない、あっちも、こっちも、あれも、これも、ってなる。 ただ太田さんは正解をくれるわけじゃない。だから正解を求めて入ってくる人は続けるのが難しいと感じるかもしれない。企画を出して OK をもらうのとは違う。自分で進めなきゃけないのが結構苦しい。 太田さんは足りない部分へのたどりつき方、方向性を示してくれる役目。正解は自分で探さないといけない。
■ 手を動かして試作を重ねることで、視界がひらける。
し: 苦しいときは、手を動かすことが大事。試作がすごく大事。その点で たかぎ さんはすごい!試作、試作、試作。だから進む。
ま:たかぎ さんは資料収集もすばらしくて、土台からしっかり固めるタイプですよね。
た:制作が難航していたとき、進むきっかけになったのは、自分がそれまでにいろいろ調べてきたものだった気がしますね。いろいろ考えたり調べていたことが結びついていくことがある、と太田さんが言っていたことを実感しました。
し:なかなか たかぎ さんのようにコツコツはできないです。
ま:ミーティングでの発表は任意ですが、だいたいみなさん発表していますよね。
た:まとまっていなくてもミーティングで発表する資料をまとめてみる、進んでいなくてもミーティングに参加して、どうして進まなかったのかを言語化してみる。言葉で表現することは、他のメンバーの発表を聞くことと同じくらいに制作の前進につながっていると思っています。
さ : あとモノ(試作品や素材など)があると周りのコメントをもらいやすいと思います。ミーティングに出て5歩進められるか、1歩進められるかは、ひとそれぞれ。
た:ひとりでつくっているだけだと気づけないことに気づかされるのも、ミーティングのいい点だと思うし、作品についていろいろ考えている時間も好きです。
ミーティングに参加して太田さんからアドバイスをもらって、目の前がパッとひらけるようなことも何度かありました。先入観が取っ払われて、それでもいいんだと目から鱗が落ちるような。あと製本ワークショップに参加して、作品づくりのきっかけができたことも結構ありました。
さ :それはありがたいです。たかぎ さんは、ワークショップで教えたことをそのまま作品にするのではなく、自分の中でちゃんと消化して表現している。進化させたものを見るのは、わたしも面白いです。
か:習っても自分のものにしないと、作品にまで落とし込めないですよね。
さ:みんなそれなりに苦しんでいるのに、なぜ続けているのかな。どこかに面白みを感じているからですよね。
か:頭の中にある完成形を、目の前に出したいという思いがモチベーションになっている。
し:いちばん癒されるのは製本ワークショップです。紙を切る作業に没頭できて、わぁ、綺麗にできた! っていう、あの達成感。2023 シーズン最後のミーティング前に、ぜったいに自分ひとりでやらないとダメだと思って、佐藤さん抜きで函を作ったこともすごくよかった!
ま:ラボ・ミーティングに参加すると、自分では思いもよらないような発想が出てきたり、先入観を打ち砕かれたり、普段は使っていない脳の部位が活性化するような……。それが刺激的で面白いなと思っています。
〈 part 3 に続く〉
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