いよいよOTAブックアートの製本ワークショップ通年プログラム最後の課題となりました。前回ご紹介した角背ノートを入れられる夫婦箱を作りました。本の外箱としてよく使われる夫婦箱は、蓋と本体の2つの箱が背中の部分で繋がっていて、閉じると箱同士が重なる構造です。
本を保護するのが目的なので、中で本が泳いでしまうようでは意味が無くなってしまいます。とはいえ、きつすぎても出し入れのときにかえって本を傷めてしまうので、ちょうど良い塩梅の隙間が必要です。さらに箱の本体に被せる蓋も同様に、大きすぎず小さすぎずの程よいサイズで作らなければなりません。製本において 0.5mm、1mm という細かい単位はよく出てきますが、夫婦箱を作るときにはよりその大切さを感じると思います。
芯材とした2mm厚のボードを切るのはなかなかの力仕事ですし、角が直角になるように、ボードの断面が斜めにならないようになど、気を配るポイントが多い作業です。ボードをミリ単位で思った通りのサイズに切るのに、参加メンバーは苦労していました。組み立ての作業も細かい注意は必要ですが、これまでの製本の作業に比べると工作をするような楽しさもあります。
夫婦箱は、閉める時に箱同士のごくわずかな隙間から漏れる空気の「パフッ」という小さな音がします。その音が聞けた時はうまく仕上げられたなと思い、つい何度も開け閉めしたくなってしまうのは私だけでしょうか?
さて、コロナによる中断もあったために予定よりも長丁場になった製本ワークショップ通年プログラムも、なんとか終わりまで辿り着きました。限られた回数の中で、製本の基本的な技術の習得を目指すプログラムでしたが、製本の世界はまだまだ道が続いています。
参加メンバーは、これからより多様な製本方法を学んでいくのか、自分なりの工夫を加えていくのか、ブックアートに転化していくのか、あるいは全く違うことを始める方もいるでしょう。製本ワークショップも、6月からより自由度の高い内容で再スタートします。
今回のブログのタイトルの追分とは、かつての街道の分岐点のことで、交通や流通の要所として今でも栄えている場所が多いそうです。OTAブックアートの武蔵小山の小さなアトリエが、メンバーそれぞれのバインディングロードが交わる賑やかな場所になることを願っています。
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