今回のバインディングロードはいつもと少し趣向を変えて、遠足です。行き先は銀座のギャラリー。OTAブックアート、ブックラボのメンバー有志で、製本アーティスト山崎曜さんの個展「?と! 山崎曜展」にお邪魔してきました。
「作品も 道具も 方法も みつけたこと ぜんぶみせます」と銘打っている通り、歴代の作品から山崎さん考案の道具まで惜しげもなく見せていただける内容でした。
しかも、手袋をすれば全ての作品を手に取って鑑賞できると言う、嬉しいご配慮も。作品についてご本人が丁寧に解説してくださり、見ているだけでは気付けない工夫やこだわりをお聞きすることができました。
山崎さんは製本アーティストと名乗っていらっしゃいますが、近年の作品は本文がなく、表紙の部分から着想を得た作品が多いため、「これは本なのかな?」と思うことも正直なところありました。
でも、お話をお聞きしていると、やはり本を作ってきたからこそ今の作品にたどり着いたのだということがよく分かりました。本を閉じた状態で、表紙から層のように浸透していくイメージがさまざまな素材の重なり方を楽しむ今の作品に繋がっていること、そして表紙からさらに外に広がっていくイメージをしているというお話が印象的でした。
もう一つ特徴的なのが、使われている素材の多様さです。まずはお気に入りの素材のダンボール、そしてアクリル、金網、綿毛や植物、野菜が入っていたネットや乾燥させたキノコなどなど、山崎さんのアンテナに引っかかったものが作品に封印されています。それらの素材の中に寒冷紗も一緒に使われていることに製本の名残を感じました。
ブックアートを追究することを目的としたOTAブックアートのブックラボ、今回参加したメンバーもそれぞれ刺激を受けたり学んだりした点があったようです。そして自分にとっての本の定義について再確認する良いきっかけにもなったようです。梅雨の真っ最中でしたが訪問した日は晴天、まさに夏の遠足のようでした。
関連記事
☞ 【スタッフ佐藤の Binding Road】#9 寄り道気分「Carousel Book」
☞ 【スタッフ佐藤の Binding Road】#8 漸進「カルトン」
☞ 【スタッフ佐藤の Binding Road】#7 2つのルーツ? 「Secret Belgian Binding」
☞ 【スタッフ佐藤の Binding Road】#6 離れていても 「交差式製本」
☞ 【スタッフ佐藤の Binding Road】#5 長い旅路「コプティック製本」
☞ 【スタッフ佐藤の Binding Road】#4 行きつ戻りつ「四ツ目綴じ」
☞ 【スタッフ佐藤の Binding Road】#3 山あり谷あり「折本」
☞ 【スタッフ佐藤の Binding Road】#2 一歩目「一折中綴じ」
☞ 【スタッフ佐藤の Binding Road】#1 はじまり
☞ OTAブックラボに関する記事はこちら。
☞ 個人ワークショップに関する記事はこちら。
☞ 企画ワークショップに関する記事はこちら。
この記事へのコメントはありません。