WORKSHOP

【スタッフ佐藤の Binding Road】#9 寄り道気分「Carousel Book」

アトリエ開催のつもりでいた5月のOTAブックアート製本ワークショップ通年プログラムも、緊急事態宣言の延長で延期せざるをえず、急遽オンラインワークショップを企画しました。
今回とりあげたのは「Carousel Book(カルーセル・ブック)」です。これまでこのブログを読んでくださっていた方は、今までと少し雰囲気が違うと思われるかもしれません。製本の王道からは少し外れますが、ちょっと寄り道気分で楽しんで作ってもらえればと、今回のテーマを決めました。

「Carousel Book」がどのように生まれたかは分かっていないようです。インターネットで調べてみたところ1930年代頃に子ども用やお土産用の本として登場したという説が紹介されていました。
読書のための本というよりは、眺めたり飾ったりして楽しむ作りで、いわゆるポップアップブック、仕掛け絵本の一種です。360度開いて表紙同士を背中合わせにすると回転木馬(Carousel)のように筒状に立てて眺めることができます。上から見ると星のように見えるので、スターブックと呼ばれることもあります。

複雑な構造に見えますが、実は作り方は初心者でもそれほど難しくありません。綴じ糸が小口側に見えているなど、普通の本の作りとはちょっと違うところもありますので、写真からどういう構造になっているのか、ぜひ想像してみてください。
実際に通年プログラムを受講している参加者からは、「すでに知っている技術で新しい形が作れて面白い」という感想を寄せていただきました。難しい技術を使わなくても工夫次第で新しい本の形を生み出せる、そんなことを体感してもらえたのではないでしょうか。

「Carousel Book」の大きな特徴は、3枚重なった本文用紙で奥行きのある立体的な装飾ができることです。切り込みの入れ方で、さまざまな物語を表現できます。
切り絵で細かい装飾をするとき、デザインカッターを使うことが多いと思いますが、私のオススメは医療用のメスです。西洋式の伝統的な手製本ルリユールで革装の本を作るときに、革や紙の端を薄く加工するのにメスを使います。取り換え式の刃先はいろいろな形があり用途によって使い分けます。
手術で使用するだけあって切れ味は抜群、角度のついた細い刃先のタイプなら、かなり細かい柄まで切ることができます。取り扱っている画材屋さんもありますので、気になる方は探してみてはいかがでしょうか。

今回も参加者の方が仕上がりの写真を寄せてくださいました。色の組み合わせや切り込みの入れかたで雰囲気がかなり変わります。
ワークショップの短い時間では満足のいくデザインを考えるのが難しかったので再チャレンジしたいという声も聞かれました。どんな物語が生まれるのか、楽しみですね。

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