4月からOTAブックアートのブックラボ 2024期が始まりました。今期の製本ワークショップ1回目は、造本研究です。研究と言っても堅苦しいものではなく、いろいろな本の構造を見てこれからの作品作りのアイデアソースにしてもらおうという企画で、今回が3回目です。
前回 と 前々回 は本を見てコメントしあうという内容でしたが、今回は開催時間の半分を使って、参加者に少し頭の体操をしてもらうことにしました。そのテーマとして取り上げたのが、ガードルブックです。なんともユニークな形をしたガードルブックは、中世ヨーロッパで実際に作られていた本の形です。表紙を包む革の一部が本の天地の幅を超えて長く延びており、その先に革紐を編んでお団子状にしたものが取り付けられています。
その丸い部分を服の腰帯び(ガードル)に引っかかるように挟んで吊り下げ、本をハンズフリーで持ち歩けるように考えられた体裁です。他に革を筒状に編んだものや、リング、フックなどが付いている場合もあるようです。
腰帯に挟んだまま持ち上げれば読めるように、本は天地逆さまの状態で吊り下げられています。実際に試してみると、なかなか理にかなった形だと感じました。当時は実務的な利便性というだけではなく、富や知識の象徴としてアクセサリー的に身につけることもあったそうです。そのため、当時の絵画や彫刻の中にも多数描かれています。
本を取り巻く環境の変化でガードルブックが衰退していった後も、より小さく軽く携帯に適した本が作られるようになっていきました。現代ではもはや紙の本の体裁すら無くなり、スマートフォンやタブレットで本を読む時代になっています。いま流行りのスマホポーチでスマートフォンを持ち運ぶのは、遡ればガードルブックと発想は同じなのでは? などと思いを巡らせてしまうのでした。
後編に続く
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