アトリエ便り

【スタッフ佐藤の Binding Road】#16 新たな一歩 「折差し製本」

6月から OTAブックアートのブックラボ 2022 が始まり、製本ワークショップも再始動です。これまでは通年プログラムとして、基礎的な製本方法を順を追って学んでいくやり方でしたが、今期からは参加者それぞれが自分のやりたい内容をできる、より自由度の高いグループワークショップにリニューアルしました。その一方で、定期的に皆で同じものを作るワークショップも企画していきます。今回はその企画の第一弾「折差し製本」の回をご紹介します。

「折差し製本」と聞いて、「あ~、あれね!」という方は…実はいないと思います。それもそのはず、今回の企画のために新しく考えた名前だからです。以前実物を見たことがあったので作り方は覚えていたのですが、詳しいことが分かっていませんでした。つてを頼って情報をいただいたところ、この作り方は、1987年初版の『Paper Pleasures』(Faith Shannon 著)で紹介されたのが最初ではないかとのことでした。その本の中でも特定の名前がついているわけではなく、他の作り方を応用した方法として紹介されているそうです。今回は、オリジナルの作り方から本文のつなげ方に一工夫を加えてみました。

特徴は糊も糸も一切使わず、折った紙を咬み合わせて仕立てているところです。だから作業も簡単。切る、折る、差し込む、それだけです。そんな中でも、ヘラで折り目をつける、きれいな蛇腹を作る、1ミリ単位で幅を調整するなど、製本の基本的な技術を使うことできれいに仕立てることができます。同様の方法でできるスリップケースの作り方も紹介しました。

「切って折っただけで、本ができちゃった。」ワークショップ後に今回の参加メンバーの1人が呟いた言葉です。紙を切る、折る、というのは、日本では誰しも子供の頃に折り紙などで慣れ親しんだ行為ですよね。それを応用すれば本にも仕立てられる、そんな面白さを折差し製本から感じてもらえたかなと思います。

使用する紙は、アトリエに豊富にストックされている紙から好みのものを自由に選んでもらいました。8つのパーツがあるので、色の組み合わせを選ぶのにも一苦労。私は個人的には迷うと同系色で揃えがちなので、実は皆さんの色合わせに興味津々でした。仕上がりはご覧の通りです。

紙を咬み合わせただけなので強度はありませんが、その軽やかさ、カジュアルさはこの作り方の一つの魅力でもあります。作りながら、背のパーツを差し替えることで本文の両面が使えることにも気付きました。そんな小さな発見が、これからの本づくりのアイデアに結び付くかもしれません。前期からの引き続きのメンバーも今期から参加のメンバーも、新たな一歩を踏み出しました。

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