今回はワークショップから少し離れて、製本の新しい楽しみ方のお話です。OTAブックアートでは、スタッフで今後やりたいことなどの話をすることがあります。その中で出てきたスタッフK 発案の100均製本、アイデアを聞いたときから私はワクワクして、すぐに頭の中では100円均一ショップの店内を物色し始めていました。いつか参加者を募ってイベントとしてやろうかという話になっていましたが、待ちきれずに勝手に挑戦してみました。
ルールは簡単、100円均一ショップで手に入るものだけを使って本を作る、これだけです。
最近の100円均一ショップは品揃えが豊富で、生活必需品から趣味の材料までほとんどのものが手に入りますよね。そんな膨大なアイテムから、使う材料を選びだすことから始めます。
まずはどんな材料を使うかの予定を立てずにお店に行き、店内のよく利用するエリアから普段はほとんど足を踏み入れないエリアまでくまなく棚を見て歩き回りました。頭のなかでこのアイテムはどう使えるかなと考えながら立ち止まってジッと棚を眺めたりしていたので、きっと店員さんからは不審がられていたのではないかと思います。
記念すべき1回目に選んだ材料がこちら。水でお風呂の壁に貼ることができるポスター、赤ちゃんのお尻拭きシート用のフタ、イヤホンです。さて、どんなものができるでしょう?
まずはポスターの一部を切り抜き、蛇腹に折り目をつけて本文を作り、綴じ穴をあけます。次にイヤホンのコード部分を切り取り、2本がくっついている部分はカッターで切り込みを入れて、1本ずつの長いコードに分けました。これを綴じ糸として使います。
イヤホンのコードは太くて針穴を通らないので、コードの端を斜めに切って綴じ穴に入りやすくなるよう工夫しました。お尻拭きシートのフタにコードの端を挟み込み、リンクステッチの要領で本文を綴じていきます。最後はもう一つのお尻拭きのフタにコードの端を挟んで綴じは完成です。
ここで迂闊にも見返しのことを考えていなかったことに気づきました。しばし腕組みをして黙考…家に余っている紙を貼っちゃおうかな…でもそれでは100均製本のルールを破ってしまう…むむむむ…。そしてひらめきました!お尻拭きシートのフタの裏には、フタをシートの出し入れ口に固定するための両面テープがついています。その両面テープを利用して、本文の最初と最後のページを表紙に固定することにしました。
こうして、初の100均製本が完成です。なかなかきちんと本の形に仕上がっていると思いませんか?たまたま選んだ材料が子供向けのものが多かったので、自分でも予想していた以上にラブリーな見た目の仕上がりとなりました。
製本にはルールが沢山あり、専用の道具が必要だったり材料をどこで買えばよいのか分からなかったりと、なかなか踏み込みにくい雰囲気を感じている方もいらっしゃるかもしれません。でも、お散歩ついでに100円均一ショップで材料を買う、こんな自由でカジュアルな楽しみ方もアリですよね。製本の可能性の広がりを感じる一方で、本の構造や製本についての基礎的な知識があるとより発想の幅が大きくなると感じた体験でした。
100均製本の面白さに目覚めた私は、実はすでに第2弾の材料も購入済です。またこのブログでご紹介する機会があるかもしれません。
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