アトリエ便り

【スタッフ佐藤の Binding Road】#27 道を拓く

2024年9月22日から24日にかけて、OTA BOOK LAB 初の作品展「機を見るに、本」が開催されました。今回のブログは、「綴じ」の視点から展示について振り返ってみたいと思います。

「la maison」 加藤 友香 2024

「雨降って、The rain falls,」 岩佐 悠里 2023

作品は、各自がテーマを深めて内容を決め、それに最も適した素材、綴じ方を探って形にしていきました。作品によっては、ガラス、OPPフィルム、蝋といった、普通の製本では使わない素材も使用しており、製作者はそれをどう綴じるかに頭を悩ませました。

「awaimainorganic」 清水 麻美子 2024

「スーベニア」 髙橋 準也 2024

テーマを表現するためにその素材を選んだわけですから、難しくても綴じるのを簡単に諦めるわけにはいきません。また、通常の綴じ方では伝えたい表現ができない場合もあります。

「暮春」 takagikayo 2022

「つながるいのち うけつぐことば」 松村 せい子 2024

例えば小さな折丁が集まった作品では、通常は麻紐や布テープなどで折丁同志をつなげる役割を果たす支持体を大きな1枚の紙として、そこに折丁を色々な方向に綴じ付けることによって折丁同士が密集するようなキューブ型の作品となりました。綴じた糸自体も作品を彩る模様となっています。

「すみか」 takagikayo 2024

本文にOPPフィルムを使って光を表現した作品は、外見は丸背の普通の本のように見せて、本を開いた時に光を感じてもらいたいという意図がありました。でも、OPPフィルムは折丁の状態にはなっておらず、1枚ずつのペラの状態だったため、通常の折丁のようにノドの部分を糸で綴じることはできません。そのため、本文のフィルムを背の丸みが出るように一枚ずつ重ねてから背に近い部分で平綴じにし、背固めをしています。

「DAYS OF LIGHT」 高野 美緒子 2024

今回挙げた2つの作品は、作品のテーマに合わせて綴じを見せて表現に活かしたものと、理想とする形に仕立てるべく外からは見えない工夫をして綴じたものの好対照の例だったかと思います。綴じることが直接表現に繋がる、ブックアートの面白さの一つだと感じました。

「台川」 佐藤 真紀 2024

正解の綴じ方に至る道筋は、自分で切り拓いていかなければいけませんが、製本ワークショップがそのちょっとしたヒントを見つけられる場となることができたら嬉しいです。

Photo by Shun Takano

OTAブックラボに関する記事はこちら。

関連記事

  1. OTAブックアート、Instagramはじめました。
  2. 【スタッフKの作品紹介】“Book Para-Site” と “…
  3. 【スタッフ佐藤の Binding Road】#2 一歩目「一折中…
  4. 【スタッフ佐藤の Binding Road】#5 長い旅路「コプ…
  5. 【スタッフ佐藤の Binding Road】#9 寄り道気分「C…
  6. 【レポート】2019年12月2日「OTAブックラボ」個人ワークシ…
  7. 【スタッフ佐藤の Binding Road】#17 造本逍遥 「…
  8. 【スタッフ佐藤の Binding Road】#4 行きつ戻りつ「…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

おすすめ記事

【お知らせ】新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴う、セゾン現代美術館「都市は自然」展の延期について。(2020年4月7日発表)

ブックアーティスト 太田泰友 が出展する、セゾン現代美術館の展覧会「都市は自然」展…

【スタッフ佐藤の Binding Road】#3 山あり谷あり「折本」

OTAブックアートの製本ワークショップ、通年プログラム 2回目のお題は折本です。…

【オーダーメイド】箔押しで年を重ねるオリジナル手帳、はじめました。

「孝本真子ブックワークス」さんからオーダーをいただき、手帳の表紙に箔押しを…

PAGE TOP