リンプ製本は、ヨーロッパで16世紀頃から作られてきた製本方法です。「limp」という語が示す通り、柔らかい素材で作った表紙を付けるので、それまでの木の板や分厚い板紙のしっかりとした表紙をつけられていた製本方法に比べると、軽やかな印象を受けます。

元々は表紙には羊皮紙や厚手の紙が使われ、本文を綴じる際の羊皮紙、革、麻紐などの支持体を表紙に通して本文と表紙をつなぐ構造になっています。表紙と本体を糊で接着したり、背を糊で固めたりしないので可逆性があり、綴じ直しも容易な作りです。最近では支持体にリボンを使って綴じるなど、構造がそのまま装飾的な効果を持つような作りで楽しまれています。

OTAブックアートの製本ワークショップ、今回はリボンを使った通称「リボンリンプ製本」を取り上げました。参加者には好きなリボンを持ってきてもらい、表紙にはアトリエにストックしてある紙や製本クロスから好きなものを選んでもらいました。


本文の折丁を作り、リボンを支持体にして糸綴じし、表紙素材に入れた切り込みにリボンをくぐらせ、表紙の四方を折り込んで、本文の最初と最後のページを包めば完成です。糊やチップボールを使わずに比較的簡単な作業でできるので、製本初心者の方でもトライしやすいのではないでしょうか。



太めの刺繍リボンを使った参加者は、リボンを結ぶのではなく、マジックテープで止める仕様で仕上げるとのことでした。表紙のスリットの数や幅を変えたりして、表紙から見え隠れするリボンをデザインのポイントにするのも良いと思います。今回はつけませんでしたが、見返し用紙をつけることもできます。



今回私は、壁紙を表紙素材として使ってみました。アトリエがある武蔵小山の商店街にはおしゃれな壁紙屋さんがあり、店先で壁紙の端切れがお手頃価格で売られています。普通の紙よりも少し厚手でしっかりしつつもしなやかな壁紙は、リンプ製本の表紙素材にピッタリなのではないかと思い立ったのです。


使ってみたところ、壁という大きな面積に合わせてデザインされた模様は通常のデザインペーパーよりも大柄で、切り取り方によって大胆な模様がでる面白さがあると思いました。新しい素材を歴史的な製本に使う、そんな遊びはいかがでしょう?
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