OTAブックアート代表を務めるブックアーティスト 太田泰友が、みなさんと一緒にブックの可能性を追究する、新しい本づくりの場「OTAブックラボ」を創ります。
前例のないこの呼びかけに応え集まってくれたのが、OTAブックラボ第0期生のメンバーでした。
活動をスタートさせた2018年10月から一年と少しが経過し、2019年12月15日、OTAブックラボのメンバーたちが互いに作品をプレゼンテーションする、最終発表を実施しました。発表に臨んだメンバーたちは、作品の最終形態が想像出来る段階まで制作を進め、そのプロセスで生まれたダミーなども並べて経緯も説明しながら、具体的な制作物を見せて現状を共有し合いました。
毎月一度のペースで制作の進捗状況を共有し合うグループミーティングや、アトリエで開催される製本技術のワークショップ、個人ワークショップなどを活用しながら、ひとつの作品を完成させることを目指し活動してきた約一年。最終発表まで漕ぎ着けたメンバーたちは、作品としっかり向き合って濃い時間を過ごして来たこと、その成果が目の前に見える形で存在することに対する、充実感に満ちているように見えました。
「本とは何か?」と自分に問いかけ、〈自分なりの本の定義〉を考えながら作品を深める姿勢は、みんなの発表から共通して伝わって来るものでした。完成を目前にした作品からは、どれも少なからずその問いに対する答えを垣間見ることが出来ます。これは、デジタルでは成せない〈本の楽しみ方〉です。
この3ヶ月間は個人での制作を深める期間として、個別でアトリエに来て作業をするなど、メンバー同士で作品を見せ合う機会はほとんど無かったので、最後に見た時とは全然違った形になっている、とその進化ぶりに驚かれる人もちらほら。
ずっと悶々とした何かを抱えながら、ラストスパートの段階で一気に「これだ!」という形にたどり着くことは少なくありません。悩んでいた部分も、作品がブレイクスルーした経緯も、約1年の全プロセスを共有することで、自分一人では経験し切れない様々な本づくりの事例を体感出来るのは、OTAブックラボの醍醐味です。
ある人は、試作品を並べて自身の制作プロセスを振り返り「何度も白紙になった。」と語りました。またある人は、積み上げて来たものを自ら壊しながら作っていくのが楽しかった、と語っていました。
メンバーたちが言う通り、とことん突き詰めて作品づくりをしていると、何度も白紙になるのです。しかし、〈白紙〉になったと思っていることは全て〈財産〉そのもの。繰り返しアイデアを練り直して、印刷方法ひとつに対しても調べ尽くしてあちこち足を運び、動き回ったことは全て〈蓄積〉されて、次の作品にも繋がって行きます。
最初の頃は、進んでいる、良くなっているという実感が持てない時期が続きますが、そんな苦しい時期も考えることと手を動かすことを止めず、コツコツ継続してきた成果が作品に表れています。
発表で「この部分がどうしても綺麗に作れない。」と悩みを語ったメンバーには、みんなで解決策を出し合い、太田の「今やってみていいですか?」のひと言から、すぐさま実験開始。
道具を取り出し「ちょっとそこ押さえてて!」「私支えときます!」と声を掛け合う私たちはもうワンチーム。測って切って貼って、突如はじまった〈ラボ〉によってお悩みはその場で解決しました。思いがけない発見もあり、みんなのテンションが上がった一幕でした。
仲間の存在は、OTAブックラボにおいて重要なポイントで、グループミーティングが終わり、個人の段階に入った9月から行き詰まってしまう様子も見受けられました。
実際に「自分一人になると途端に難しくなって、ミーティングがあって、みんなの意見を聞けるから進められて来たことを痛感した。」という声もありました。OTAブックラボが、みんなにとって作品づくりの基地になっていたのは、とても理想的であり嬉しいことです。
発表も後半になると、立ちましょうと言った訳でもなかったのですが、気付けばなぜだか聞く側も全員立ち上がって作品を観ていたり、みんなの中で燃えるアツい何かを感じる空気に。
発表を終えると、展示の予定や、来年のOTAブックラボの活動についてなど、全体で共有すべき事項を太田からお伝えし、恒例行事となった ラ・忘年会(ご説明するのも野暮ですが、ラボ×忘年会=ラ忘年会 の公式。)へと移動。この一年のことや、今後の活動のことなど、みんなで語り合いました。
「大学の卒業制作でも取り組む期間は半年ほどで、一年以上かけてこんなにじっくりひとつの作品と向き合う機会は今までに無かった。」といった嬉しい感想や、第1期の活動に向けた意見なども聞くことができ、スタッフKもますます気合が入りました。
ここからはいよいよ、作品完成に向けて走り切ります。OTAブックラボの続報をお楽しみに!
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