OTAブックラボ

OTA ブックラボ 座談会〈part 3〉


: ブックアートを人に説明するとき、何と言っていますか?

: 製本と言うだけでもピンとくる人も少ないようで、装幀?って言われたり、本の外側のデザインをしているの? それとも物語を書いているの? と聞かれたりします。それがブックアートとなると、さらにイメージができないようですね。

: 本という形をしたアート、と友だちには説明するんですけど、みんな「?」マークで……。ひとことで説明するのは難しいですよね。

: 太田さんの作品を見せるのが一番わかりやすいかも。

:ラボ内でもブックアートとは?という話は何回かしていますけど、いまだにつかみにくい。

: ブックアート、アートブック、装幀、ブックデザイン、たぶん4つぐらい軸があって、ブックアートとアートブックは一緒のようで全然違う。

:ブックアートって最終的に仕上がったものが結構奇抜だったりするから、そういう奇抜なものをつくるのがブックアートだと思われることもあるけど、そういうわけじゃない。コンセプトを一番よく表現しようとした結果、奇抜な形になっただけで。

: 必ずしも本の形をしている必要もない。

:0期のときに、どういう状態のときに本と考えるか、という話が出たと思います。ただバラバラの紙が置いてある状態でも、ある人にとっては本という場合もあるし、綴じられているものが本であるという人もいる。自分にとっての本の定義をもっていたほうがいい、ということをやりましたね。 太田さんは「背中」があることが本だと感じると言っていて、個展のタイトルも「背を見て育つ」[*11 ]となっていましたけど、太田さんにとっては「背中」が本の象徴的な部分だったのだと思います。

[*11 ]2019 年に八戸ブックセンターのギャラリーで開催

:自分なりの定義を決めておいたほうが、作品をつくりやすいですよね、自分なりの軸ができて。でも縛ることになるのかな?

:それも気になりますよね。自分の定義に合わなかったら、本じゃないんじゃないかと……。

: わたし自身は、0期のときから本の定義がだいぶ変わってきています。最初は綴じられていることにこだわっていたけど、いまは綴じられているかどうかは意識しなくなりましたね。それで説明がまた難しくなる……(笑)。

 

:アートブックは中身ありきですよね。コンテンツが決まっていて、それに即してデザインができてくるというか。ブックアートでは、テキストは絶対にこれを使うという進め方はあまりしない。

:ブックアートは、コンセプトそのものを表現する。形や作りも含めて。

:テキスト(中身)は後回しになることが多いですよね。

:テーマを深めたうえで、どういうテキストが適切かを考える流れですね。

:テキストから始めてもいいと思うけど、何となく形状からになってますね。

:それがアートブックとの違いにもつながってくると思います。中身があってそれをどういう風に仕立てるかではなく、ブックアートの場合はテキストも構造体も重要性としては並列。 ちなみに「有機/無機」のテーマでは、わたしはテキストが先でした。

:ブックアートって考えることが多すぎますよね。太田さんが言うように、ブックアートは建築に似ているから、中身と外見と構造と仕掛けが全部連動しないと成立しない。勢いではつくれない。1年かけて1冊つくるのも厳しい(笑)。

:いま話を聞いていて、見る人がこれは何を表現しているのだろうと考えるのがブックアートなのかなと思いました。アートブックの場合、目を引く形だとしたらそれはデザインだけど、ブックアートの場合はこれを表現するためにこの形になるという必然性がある。

:太田さんの作品を見ると、全部理由付けができるものになっていますよね。 一同、うなづく。

 

(補記・おまけ)


メンバーの口から飛び出した人間像は、「手を動かすことが好きな人」、「ものとしての本が好きな人」、「装幀買いする人」、「紙が好きな人」、「AI 時代に逆行している人」、「効率を求めない人」、「教室みたいじゃない(カリキュラムがない)ことに面白みを感じる人」、「柔軟性がある人」、「手間をおもしろがる人」……。
 効率や生産性を優先し、デジタル技術を駆使することが求められる現代社会で、手間をいとわず、作品に費やした手間をリスペクトできるラボの人たちは、「ちょっと変わった」部類に入るかもしれません。
 ラボでは正解は出ません。自分の作品に向き合い、ああでもない、こうでもないと奮闘しながら試作を重ね、「ちょっと変わった」メンバーとの有機的なつながりを楽しんでいます。

〈了〉
*2024 年6月、OTA ブックアート武蔵小山アトリエにて。 文責:松村

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