アトリエ便り

【スタッフ佐藤の Binding Road】#14 追分「夫婦箱」

いよいよOTAブックアートの製本ワークショップ通年プログラム最後の課題となりました。前回ご紹介した角背ノートを入れられる夫婦箱を作りました。本の外箱としてよく使われる夫婦箱は、蓋と本体の2つの箱が背中の部分で繋がっていて、閉じると箱同士が重なる構造です。

本を保護するのが目的なので、中で本が泳いでしまうようでは意味が無くなってしまいます。とはいえ、きつすぎても出し入れのときにかえって本を傷めてしまうので、ちょうど良い塩梅の隙間が必要です。さらに箱の本体に被せる蓋も同様に、大きすぎず小さすぎずの程よいサイズで作らなければなりません。製本において 0.5mm、1mm という細かい単位はよく出てきますが、夫婦箱を作るときにはよりその大切さを感じると思います。

芯材とした2mm厚のボードを切るのはなかなかの力仕事ですし、角が直角になるように、ボードの断面が斜めにならないようになど、気を配るポイントが多い作業です。ボードをミリ単位で思った通りのサイズに切るのに、参加メンバーは苦労していました。組み立ての作業も細かい注意は必要ですが、これまでの製本の作業に比べると工作をするような楽しさもあります。

夫婦箱は、閉める時に箱同士のごくわずかな隙間から漏れる空気の「パフッ」という小さな音がします。その音が聞けた時はうまく仕上げられたなと思い、つい何度も開け閉めしたくなってしまうのは私だけでしょうか?

さて、コロナによる中断もあったために予定よりも長丁場になった製本ワークショップ通年プログラムも、なんとか終わりまで辿り着きました。限られた回数の中で、製本の基本的な技術の習得を目指すプログラムでしたが、製本の世界はまだまだ道が続いています。

参加メンバーは、これからより多様な製本方法を学んでいくのか、自分なりの工夫を加えていくのか、ブックアートに転化していくのか、あるいは全く違うことを始める方もいるでしょう。製本ワークショップも、6月からより自由度の高い内容で再スタートします。

今回のブログのタイトルの追分とは、かつての街道の分岐点のことで、交通や流通の要所として今でも栄えている場所が多いそうです。OTAブックアートの武蔵小山の小さなアトリエが、メンバーそれぞれのバインディングロードが交わる賑やかな場所になることを願っています。

関連記事
【スタッフ佐藤の Binding Road】#13 トンネル 「角背ノート」
【スタッフ佐藤の Binding Road】#12 ガイドブック 「ワーク折丁」
【スタッフ佐藤の Binding Road】#11 蝶の道行き 「列帖装」
【スタッフ佐藤の Binding Road】#10 遠足
【スタッフ佐藤の Binding Road】#9 寄り道気分「Carousel Book」
【スタッフ佐藤の Binding Road】#8 漸進「カルトン」
【スタッフ佐藤の Binding Road】#7 2つのルーツ? 「Secret Belgian Binding」
【スタッフ佐藤の Binding Road】#6 離れていても 「交差式製本」
【スタッフ佐藤の Binding Road】#5 長い旅路「コプティック製本」
【スタッフ佐藤の Binding Road】#4 行きつ戻りつ「四ツ目綴じ」
【スタッフ佐藤の Binding Road】#3 山あり谷あり「折本」
【スタッフ佐藤の Binding Road】#2 一歩目「一折中綴じ」
【スタッフ佐藤の Binding Road】#1 はじまり
OTAブックラボに関する記事はこちら。
個人ワークショップに関する記事はこちら。
企画ワークショップに関する記事はこちら。

関連記事

  1. 【スタッフ日記】ブックアートの秋! 太田泰友、銀座・横浜・軽井沢…
  2. 「OTAブックアート 印刷特別講義」を初開催しました。
  3. OTA ブックラボ 座談会〈part 3〉
  4. 【お知らせ】2020年1月26日(日)「OTAブックアート 箔押…
  5. 【スタッフ日記】オンライン・トークイベント「OB-Talk 」初…
  6. 【スタッフ佐藤の Binding Road】#12 ガイドブック…
  7. 【スタッフ佐藤の Binding Road】#10 遠足
  8. 【スタッフ日記】オーストラリア “Canberra Craft …

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

おすすめ記事

【スタッフ日記】新型コロナウイルス感染予防に! 手づくりの、ブック布マスクをいただきました。

こんにちは、OTAブックアートのスタッフKです!stay home な毎日、みなさまいかがお過ごし…

OTAブックラボは〈ラボ〉である—— 太田泰友の Book Arts Journey(4)

OTAブックラボ2023シーズンのメンバー募集期間ということで、日頃からこの〈ラボ〉…

UTYテレビ「山梨いまじん(今人)」撮影のお話。

11月上旬、OTAブックアートのアトリエでテレビ番組の収録が行われました!今回、ブ…

PAGE TOP