アトリエ便り

【スタッフ佐藤の Binding Road】#13 トンネル 「角背ノート」

緊急事態宣言でなかなか予定通りに進まなかった OTAブックアートの製本ワークショップ通年プログラムも、ようやく後半戦です。ワークショップのタイトルは角背ノートとしましたが、角背上製本と言われる仕上がりの作り方です。

通年ワークショップではこれまでいくつかの製本方法を扱ってきましたが、複数の折丁を綴じることや、背と表紙が一体となったハードカバーがつくということから、これまでに増して本を作っているという実感を得られるのではないかと思います。

工程が多いので、3回に分けて作業を進めました。リンクステッチという綴じ方の他に、クータや溝といった本の開きを良くするための構造、花布など、新しいこともいろいろ出てきます。その一方で、これまで学んできた紙を折る、ボードを切る、製本クロスで包むなどの基本的な技術の大切さも再確認できると思います。

もう一つ新しいこととして、表紙の装飾の付け方も盛り込みました。表紙ボードに好みの形の凹みをつけて、同じ形に切った別の素材をはめ込む方法です。同じ方法でタイトルを貼り込む事もできますし、凹ませるだけで装飾とすることもできます。これまでも使用する紙やクロスはそれぞれ好みの素材を選んで貰うようにしてきましたが、装飾を付けることで、より個性が出たと思います。

ところで先ほど出てきた「クータ」について。「クータ」という呼び名、不思議な響きですよね。呼び名の由来は「管」「空帯」から来ている、かつて製本職人が使っていたという「空袋くうたい)」という言葉が訛って「クータ」になった、など諸説あるようです。音の響きからフランス語のようですが、実は日本語なのですね。作り方は簡単、細長い紙の長辺の両側を折り、端同士を糊で貼りつけてトンネル状にします。これを綴じた本文の背に貼りつけることによって、本を開くときに本体と背表紙の間に空間ができて開きやすくなります。

読みやすい本にするためには開きを良くするというのは大切なポイントです。こんなに小さくて簡単な構造のパーツが本を読みやすくしているのかと、初めて作ったときに面白く思ったことを思い出しました。自分が製本を習い始めた頃に感じた面白みやワクワクを、参加メンバーが今感じてくれているのかもしれません。

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