2023年もすっかり明けて、OTAブックアートの製本ワークショップも動き始めております。でも、今回は少し戻って2022年最後の製本ワークショップで取り上げた、ペーストペーパーのお話です。
日本では糊染めと呼ばれたり、ドイツ語読みのクライスター・パピアと紹介されたりもしています。西洋では16世紀頃から作られ、本の表紙や見返し用紙に使われてきました。高価なマーブル紙よりも、手軽に使える装飾紙という位置付けだったようです。小麦粉と水を混ぜて作ったペーストに絵の具を混ぜて紙に塗り、櫛状のヘラで糊をこそげ取るように線を描いて模様をつけていくのが基本的な作り方です。
ひめ糊(デンプン糊)を始め、いろいろな材料での作り方も紹介されています。今回はCMC糊を使用しました。水で解くときれいな透明になり、弾力のあるもっちりとした感触になります。模様を描くツールはなんでもよく、今回はスキージーに切込を入れたもの、フォーク、粘土用のヘラなどを用意しました。
さて、準備ができたらどんどん作ってみましょう。まずはCMC糊にアクリル絵の具と水を混ぜて紙に塗り広げます、そしてゲレンデにシュプールを描くスキーヤーのように、スキージーをシュルシュルと滑らせれば、一丁上がり。指を使うとプリミティブな雰囲気の線を描くことができますし、スタンプのようにペタペタと型を押して繰り返し模様を作ったり、クシャクシャにしたティッシュなどで軽く叩けばモヤモヤとした模様も作れます。
最初はどうしようかと戸惑っていた参加メンバーも、いったん始めてみればどんどん手が動いていきました。勢いよく手を動かしてランダムな線の重なりを楽しむ人、慎重に配置を考えて模様を描いていく人、デカルコマニーの手法を試したり、ついにはコテ絵のようにヘラに糊をつけて絵を描く人まで。私の予想を超えて、いわゆるペーストペーパーとは違う趣のものもできましたが、こんな自由さが飛び出すのも、ワークショップの楽しいところです。
私が感じるペーストペーパーの面白さは、作っている最中は糊の厚みで表面が凸凹しているのですが、乾くと平滑になり糊の凸凹が色の濃淡となって紙に定着して味わいが増すところです。水分を含んでツヤツヤだった色合いも、マットな雰囲気に落ち着きます。
その後のブックラボミーティングではペーストペーパーについてのレポートをしてくれたメンバーもおり、精巧な模様の作例を見ながらどんな方法で作っているのかと推測してみたりもしました。まだまだ探求のしがいがありそうなペーストペーパー、私もまた時間を見つけていろいろな手法を試してみたいと思います。
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