WORKSHOP

【スタッフ佐藤の Binding Road】#23 間道「革装のロングステッチ」

製本を学ぶ方の中には、革装の本に憧れを持っている方が少なくないと思います。私自身も、滑らかな革に包まれた本の美しい佇まいに憧れ、自分で作りたいと思ったのが製本を習い始めたきっかけでした。

とはいえ革を使うにはある程度製本に慣れてからのほうがよいため、こちらのワークショップではこれまで革は使っていませんでした。

OTAブックアートの製本ワークショップ、2023年最後の企画ワークショップでは革装のロングステッチを取り上げました。

参加メンバーにとっても待望の革素材、使う革を選ぶときはテンションが上がります。ロングステッチは背中に綴じ糸が見えるので、革と綴じ糸との色合わせに頭を悩ませていました。

革を製本に使う場合、適切な厚みに「漉く(すく)」という作業が必要になりますが、今回は元の厚みのまま裁ち切りで、革の端の形もそのまま活かし、裏側も毛羽立ったまま使ってラフな雰囲気に仕上げました。

製本をやっている方ならロングステッチという名前はご存じだと思いますが、おそらくその定義は曖昧なのではないでしょうか。ざっくりというと、折丁を直接表紙素材に綴じ付けて、綴じ糸が比較的長く背の表側に出ている綴じ方を指すと考えて良さそうです。構造や作り方が比較的簡単で、見た目の可愛らしさもあって人気のある綴じ方ですが、実は歴史は古く、ヨーロッパでは 17世紀頃から作られていたそうです。

ロングステッチを画像で検索すると、いくつかの作り方が出てきます。今回は、折丁の綴じ穴の位置に合わせて表紙革の背に切り込みを入れて、そこから綴じ糸を通す方法にしました。綴じ方自体はそう難しくはないのですが、糸が緩みやすいので気をつけながら綴じ進めます。

ロングステッチは、背の綴じ糸の部分を装飾として見せられることも特徴です。シンプルに綴じていけば、折丁の厚みの幅に糸で背に縞模様が出来上がります。綴じ穴の位置を工夫すれば、糸で模様を描き出すことも可能ですので、いろいろと試してみるのも楽しみの一つです。

今回は、隣りの折丁の綴じ糸に糸を絡めて、綴じ糸が網状に見えるように仕上げました。初めの3折くらいまでは、絡めた糸が引きつっていて上手くできているようには見えませんが、綴じ進めるといつの間にか綺麗な網目が出来上がっていきます。そうなってくると楽しくなり、作業のペースも自然と上がってきます。

ふと、できた模様が「よろけ縞」のようだなと思い調べて見たところ、縞模様の事を「間道(かんとう/かんどう)」とも言うそうです。着物や茶道具に詳しい方は、耳馴染みのある言葉かもしれません。一方で「間道」には脇道や抜け道というような意味もあります。

これからも製本にまつわる色々な方と関わりながら進むうちに、ふと振り返ってみれば綺麗な模様が出来上がっている、そんな製本生活を送っていければと思うのでした。

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